原作ファンが語る『THE FIRST SLAM DUNK』良いところとイマイチなところ

昨年12月3日に公開され、今後もますます観客動員数を伸ばすと予想される映画「THE FIRST SLAM DUNK」

漫画原作者の井上雄彦が自ら監督を務めるアニメ化は、原作ファンとして大いに期待しておりました。

しかし漫画とアニメーションは表現手法が全く異なります。漫画家・井上雄彦が専門外、しかもフルCGのアニメーション制作で本当に良い作品を生み出せるのだろうか、という不安も大いにありました。

この記事では漫画原作ファンの私が実際に映画をみて

  • 良かった所
  • イマイチな所
  • 次回作に期待する所

をまとめました。

物語のあらすじ 

高校バスケットボールインターハイの2回戦、神奈川代表・湘北高校 VS 秋田代表・山王工業から始まります。

原作漫画においてはストーリー終盤、最後の戦いです。最も盛り上がるクライマックスと言って良いでしょう。

原作では主人公は素人・桜木花道でしたが、本作品では主人公は同チーム内の2年生・宮城リョータが主人公となり、彼の主観から物語が描かれています。

山王戦を軸にして、宮城リョータの過去回想シーンが随所で織り込まれているというストーリー構成になっていました。

注意

以下作品のネタバレを含みます

良かった所

最も心配していた「フルCGアニメーション」ってどうなんだ…。という点ですがこれが意外にもとても良かったです。

コートの広さ選手の身長スピード感がリアルに表現されており、まるでリアルなバスケットボールの試合を見ているような感覚に陥りました。

漫画とアニメーションでは時間の概念が異なります。漫画では1コマ1コマ噛み締めて読むことができるシーンがリアルタイムだとこうもあっさり済んでしまう。

そのあっさり感が、不思議となんか良いんです。

漫画を読んでいるときは主人公たちに強い思い入れもあり、のめり込んで見ていますからワンシーンワンシーンをゆっくりと感じます。つまり、読者は当事者としてあの試合に関わります。

しかしもし当事者ではなく観客としてあの試合を見ていたら、あっさりなんです。選手同士の会話は聞こえないだろうし、彼らの試合への思い入れも知らないですから。

本作品ではそのあっさり感がいい感じに滲み出ていた。まるでかつて本当にあった伝説の試合、湘北対山王を当時観戦に行ったと思わせるような。

原作漫画の主観から見る山王戦。本アニメーション映画の客観から見る山王戦。それぞれの手法のメリットをうまく用い、漫画と映画の2つで1つの作品に着地に成功しています!

CGという手法は無から有を生み出す、という意味ではいくらでもごまかしが効く手法なので、良い作品ももちろんありますが、そうでない作品も多いです。

しかし本作品のように有から有を生み出す、つまりバスケットの試合というリアルな動きをアニメーションで再構成するという試みは、CGという手法が製作陣のやりたいこととうまくハマった、と感じます。

イマイチな所 

宮城リョータを主人公としたストーリー部分がイマイチと感じました。

上記に述べたように、CG手法というものは無から有を生み出すという点においてあまり適した方法と言えません。素人から見るとごまかしが効く手法に見られてしまいがちで、使いこなすにはよっぽどの実力やコストが必要なためです。

バスケットをプレイするシーンにおいてのアニメーション(再構成:有から有)は素晴らしいですが、ストーリー部分のアニメーション(オリジナル:無から有)はイマイチでした。

全ての原因がCGというわけではありませんが、表情が能面的に感じます。

またアニメーションとしての感情の演技や演出がイマイチな為、キャラクターに説得力がありません。実際にこの世界で、宮城リョータが生きている、というリアリティーが感じられません。原作漫画で生きたリョータに馴染んできた分、リョータってこんなヤツだっけ?っていう気持ちが強く残ってしまいました。演出のために操られているような印象です。

このストーリーを描きたいのであればアニメーションにする必要はなく、漫画という手法の方が合っていると思います。

製作陣としては媒体を漫画からアニメーション映画にするため、何か新しい要素を入れたい!ということでリョータ主人公の新ストーリーを盛り込んだのだと思いますが、蛇足に感じました。

アニメーションだからこそ表現できるリアルな時間、空間を主軸にした新しい切り口の山王戦。こちらの方にフルコミットして、蛇足なストーリーは付け足すべきではなかったと感じました。

演出のコンセプトにちょっとブレがあったように思います。

次回作に期待する所

本作品は山王戦でしたが、インターハイ出場をかけた陵南戦や海南戦などもぜひ観てみたい!と思いました。

その際はぜひリアルタイムな試合進行にコミットし、客観的にあの名試合をリアルに再現したらどうなるかという軸で作っていただけたらな、と思います。

コンセプト的にはいっそ観客を主人公に据えちゃってもいいのではないか?とも思ったりしますね。

少年Aがあの名試合を見て、NBA選手を目指すとか…。

総評

ストーリーで不満なところはあったものの、原作ファンは見る価値あり!

非常に良い仕上がりになっている作品だと思います。

CGアニメーションの新しい可能性を見出すことができました。

まとめ

映画『FIRST SLAM DANK』の良い所、イマイチな所をまとめました。

原作ファンの方は見に行って損はしません。

映画館の大迫力でぜひ堪能することをお勧めします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です